超伝導体中の“ヒッグス粒子”の性質を解明
― マクロな量子状態を光で制御する新たな可能性を拓く―
超伝導体中の“ヒッグス粒子”の性質を解明
― マクロな量子状態を光で制御する新たな可能性を拓く―



図1 超伝導体における対称性の自発的破れ。複素量である超伝導秩序パラメータの実部と虚部の関数として自由エネルギーを描いたとき、常伝導状態では、(a)のように原点に底があり、系は、秩序パラメータがゼロという対称性の高い状態にいる。超伝導状態では、(b)のようにワインボトルの底のような形をとり、最もエネルギーの低い状態では秩序パラメータがゼロではない値を持つ。超伝導転移が起きると、原点からどこに向かって落ちても良いが、どこか一点に落ちて、対称性が低下する(「対称性の自発的破れ」)。相転移によって対称性が破れると、それを回復しようとして系に揺らぎが生じる。その揺らぎの方向は、(b)の 青矢印で示すように、ワインボトルの底に沿って動くモード(位相モード、つまり南部・ゴールドストーン・モード)と、赤矢印で示す壁を駆け上がるモード(振幅モード、つまりヒッグス・モード)の二つがある。



図2 超伝導NbN薄膜試料に入射したテラヘルツ波電場パルスの時間波形と、このパルス照射中に秩序パラメータが振動していることを示す実験結果。テラヘルツ電場が中心周波数0.6THz(テラヘルツ)で振動しているのに対し、秩序パラメータはヒッグス・モードとの共鳴により、その倍の1.2THzで大きく振動する。



図3 超伝導NbN薄膜試料を透過したテラヘルツ波パルスの強度のパワースペクトル(周波数依存性)。縦軸の強度は対数で表示。転移温度以上(15.5K、-257.6℃)では周波数0.6THz(テラヘルツ)のパルスがそのまま透過してくるが、転移温度以下(10K、-263.15℃)ではその3倍の周波数(1.8THz)を持つ第三高調波が発生している。
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